夫と離婚しないまま死別しました。「死後離婚」という言葉を聞き、あまり夫婦仲が良くなかったので離婚したいのですが、どのようなものなのでしょうか。
シュシュ:死後離婚というのは法令の用語ではないよね。
弁護士:配偶者の親族との姻族関係を終了させるために届出をします。とはいっても法令のことだけなので事実上の影響があるのかは分からないですね。私の母親はこの死後離婚をしていませんが、だからといって亡父の姻族と関わりがないですのでね。気持ちの問題、あとは扶養関係などの問題なのかなと思っています。
シュシュ:配偶者の一方が亡くなった後に、離婚するという制度はありません。離婚する方法は、夫婦が合意して行う協議離婚、裁判所の手続による調停離婚・裁判離婚・審判離婚のみです。
弁護士:知らない人もいるのですけど、配偶者がなくなると婚姻関係も終了してしまうのです。
シュシュ:そういった、手続の種類の意味では、「死後離婚」という制度はありませんが、姻族との関係を戸籍上終了させる制度という意味で「死後離婚」という言葉は一般に使われています。
弁護士:離婚をすると、夫婦関係が終了すると共に、配偶者の親族(姻族)関係も終了します。但し、配偶者が亡くなった場合は、そのままだと姻族関係は原則として終了しません。しかし、配偶者の死亡後に、自分の本籍地または住所地の市町村役場に「姻族関係終了届」を提出することで、配偶者の親族との姻族関係は終了します。これには手続の期限は無く、配偶者の死後、いつでも役所に提出することができます。また、姻族側の了承は不要で、届出をしたことが通知されることもありません。
シュシュ:それでは、配偶者の親族との姻族関係が終了するということには、どういう意味があるのでしょうか。簡単に言えば、親戚ではなくなるということですが、法律上も一定の影響があります。
弁護士:うーん、ものの本はそうだけど相続を体験した身からするとそう思うかなあ。例えば、配偶者の親族に対しては、一定の扶養義務を負うことがありますが、姻族関係終了の手続を行った場合には、姻族関係が終了しているため扶養義務を負うことはありませんとかね。
シュシュ:その他、法律上、一定の範囲の親族が行いうる様々な事項として、「四親等内の親族」は成年後見開始の審判の申立てができる、等が挙げられますが、姻族関係が終了している場合は、終了した人物に対してその申立をすることはできなくなります。
弁護士:尚、姻族関係は終了しますが、離婚ではありませんので、配偶者の遺産に対する相続権や遺族年金の受給には影響がありません。「死後離婚」という言葉が使われているのでこの点で誤解が生じやすいのですが、あくまでも、姻族との関係を終了させる手続である、ということに注意が必要です。まあでも、実際は相続や遺族年金の受給など一区切りついた後で検討される方が多いのかなと思います。