離婚後の共同親権検討も―上川法相明らかに

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離婚後も「共同親権」検討

 日本も「クレーマークレーマー」の時代を卒業することができるのだろうか。

韓国に遅れること10年

読売新聞が、2018年7月15日付朝刊やウェブニュースで、「離婚後も『共同親権』検討」政府、面会促し健全育成」との記事が出ました。

一部を引用すると、「政府が、離婚後に父母のいずれか一方が親権を持つ『単独親権』制度の見直しを検討していることがわかった。離婚後も双方に親権が残る『共同親権』を選べる制度の導入が浮上している。父母とも子育てに責任を持ち、親子の面会交流を促すことで、子どもの健全な育成を目指す。法務省は親権制度を見直す民法改正について、2019年にも法制審議会(法相の諮問機関)に諮問する見通しだ。1896年(明治29年)制定の民法は、家制度を色濃く反映している。親権が子どもに対する支配権のように誤解され、児童虐待につながっているとの指摘もある。親権は2012年施行の改正民法で『子の利益のため』と明記されており、政府はこの観点から更なる法改正に着手する方向だ。」というものです。

 

上川法相、船戸結愛ちゃんの離婚母、継父による殺人「法務省として、重く受け止める」

記事に関連して、上川陽子法務大臣は読売新聞社のインタビューに対して、「東京都目黒区で今年3月、5歳の女児が虐待死した事件は法務省としても大変重く受け止めている。

健全に面会交流が行われていなければ、虐待を発見できた可能性も

親はこどもを監護する義務がある。しかし、こどもがSOSの声をあげられない中、命が失われたり痛めつけられたりしている。人格がある一人の人間として、しっかりと向き合っていくことがこどもの健やかな成長につながっていく。表に出せないこどもたちのSOSを聴ける社会でなければならない。そのための親権制度の見直しを検討したい」と述べた。(7月2日読売新聞へのインタビュー)

 

弁護士、福祉職、シュシュのパースペクティブ

シュシュ:日本では、1980年から時間が停まっていたからようやく共同親権に動き出したか、という印象です。

2019年の法制審で審議、自民党部会の了承得られるかが焦点

弁護士:日本には「観測記事」というものがあって、真偽はさておき共同親権を導入したらどうかという世論の動向をみるために使われることもあります。従って読売新聞がいうように来年である2019年の法制審に諮問されるか分かりませんし、法制審に諮問されても自民党部会の反対で実現しなかった法案はそれなりにありますから実現可能性はどうなのかな、と感じます。

シュシュ:池上さんの新聞ナナメ読みみたいだね!

福祉:日本は共同親権の制度の実現が遅れています。作るのであれば良いものを作って欲しいですね。

弁護士:ただ、読売新聞は政府寄りの新聞であるので、情報も政府関係者から入手しているのではないか、と思います。法相のインタビューも裏付けているので、船戸結愛ちゃんの虐待死が健全な面会交流が行われていたら防止できていたのではないか、面会交流殺人ならぬ面会交流不実施殺人!といわれました。彼女のノートを音読すると涙が止まりません。

シュシュ:読売の記事を読んでも、こどもに財産なんてないから、「親権のない親はほとんど子育てに関われず、面会交流も著しく制限されている」という問題意識が出ているね。それが、面会交流不実施殺人になったわけだ。

弁護士:たしかにお子さんへのインタビューでは、非監護親との面会交流で、不満がぽろっと出ることがあるのですが、問題は不満は多かれ少なかれあるから、額面通り受け取らずその深刻性も非監護親は見極めないといけないという点にあるかもね。でも、非監護親が異常に気付く例もあります。

単独親権と共同親権の選択制にして、単独親権の場合、面会交流の権利性が強化されるか

読売では、各国の諸法令も紹介されていますが、最終的には、カリフォルニア州のように、単独親権と共同親権を選択できるようにして、単独親権の場合は「面会交流権」を法的に明確に保障するというようになる可能性が高いのではないかな。

シュシュ:欧米では共同親権が主流で、たいてい母親が監護権をもって、一定の養育を父親から受けるということが多いね。こどもの健全な発達のためには両親が必要との認識から離婚後も父母が共同で子育てを担うと記事にはありますね。

弁護士:シュシュくんは、母親からのペアレンティングを拒否しているのにね?

シュシュ:ノン、僕の場合は、「7年間ママンがシュシュを育てたから、あとの7年間はパパに育ててもらえ」っていわれたんだよ。あり得ません、ノンです!

福祉:実際、日本の文化的慣習から「共同で子育てを担う」ということにはならないでしょう。しかし、実際の8割の親権を母親がとる一方で、経済的な中核は「何の権利もない」父親が養育費の大半を担うという制度自体が、社会的実情と合わなくなっている実情もあるのでしょうね。

シュシュ:昔はこどもの数も多かったし、中卒や高卒で働いていたから高等教育費について考える必要がなかったからね。

弁護士:実際、母親が親権を主張しながら、学費は「全部父親で負担してください」という意識でいるのならば、経済的責任が子育ての中心でもありますから、そもそも親権者として適格なのかという疑問も呈されていたところです。そういうところから共同親権というアプローチはあり得るでしょうね。

シュシュ:さらにナナメ読みのポイントはないの?

 

法制審ナナメ読み―共同親権だけではないのがポイント!

弁護士:あります。実は法制審では、セットで懸案の特別養子の年齢拡大、無戸籍のこども対策のため「嫡出否認の訴え」を母や子も起こせるようにする改正とセットになっています。共同親権は女性側の反対が強いでしょうが、特別養子に関しては、そもそも女性が子育てを遺棄したケースが多く女性側も反対はできないでしょう。そして、嫡出否認の訴えについては、子や母が起こせるようにすることは女性の権利拡大につながります。要は、両方に花を持たせる法案をセットにしているわけで、手法としては悪くないと思いますね。これを法相は「こどもの利益に関する民法改正」と名付けています。

こどもの利益に関する民法改正

また、法務大臣も現在の家庭裁判所の運用に手厳しい批判の答弁が出るなど立法で何とかしないといけないと思った中、松戸支部でのフレンドリーペアレント判決、名古屋地裁の福田千恵子裁判長の目的外使用の仕立て上げDV認定判決で愛知県にも賠償命令判決が出るなど、司法のサイドからも、おかしいのではないか、という芽が出始めていたといたところに、親子関係の断絶はこどもからのSOSも見逃すことになるという世論が示されたことです。

 

親子関係の断絶が招いた5歳の船戸結愛ちゃんの殺人事件

東京都目黒区で2018年3月、5歳の船戸結愛ちゃんが母親と継父に殺害される事件が発生し、その手紙などが社会に強い衝撃を与えました。その内容は、親権を持つ実母や継父ではなく、「パパ、ママいらん」「前のパパがいい」と訴えていたのでしたね。面会交流は適正な監護が行われているのか、利害関係者が見守るという意味も包含されるようになってきている社会の声が強まったことは間違いありません。

福祉:それに加えて母親が親権をとっても、再婚するから「いらなくなった」という女性も結構いるのよ。NEWS23の雨宮塔子さんも批判が強いのはそういうところね。私も同じくらいのこどもがいますが、仮に離婚して、ネットワークのキャスターになるから、こども返すわ、というのは母親として支持できません。

シュシュ:船戸結愛ちゃんの事件は、社会に衝撃を与えるとともに、実は知られていない社会の実態をあぶりだしたよね。実際、養護施設に入所している子は、母親が出て行ってしまったケースが大半を占めるのであって、DVや児童虐待はわずかにすぎない、とかね。パリジャンの感覚でいうと、女性も働くのは当たり前なんだよね。たしかに、小さいころは、ママンと一緒にいたいと思うんだけど、パリでは、女性も普通に働きますからね。父親が労働、母親は家庭を守るなんて感覚自体があんまりないかな。家事は、ナニイの仕事という感覚のこどももいるしね。

弁護士:日本では東京などの首都圏では、夫婦共働きが増えてきたんだよね。面会交流といっても揉めるのは小学生までなんだ。それ以降はこどももなにかといそがしい、というのが首都圏の感覚だね。だから、母親神話、テンダーイヤーズみたいなものはもう崩壊していると思うね。そこらへんは監護態勢で決めてもいいような気がしています。

シュシュ:テンダーイヤーズの根拠に女性は淑女である、というキリスト教の信仰が背景にあったもんね。そのキリスト教の国でも、もはやテンダーイヤーズはとられていないからね。

福祉:繰り返しになりますが、福祉施設の児童も多くは親が育てられなくなったというケースで、虐待や特にDVになると数えるほどです。不当にエモーショナルにされているという意識と現場との乖離が著しいなと思いますね。

 

家族法の論点を一気に解決し、子の最善の利益を図れる改正に

弁護士:共同親権、監護権制度の創設、嫡出否認制度の見直し、特別養子縁組の見直しが行われると、民法でもやもやしていたところがクリアになるわけで、画期的な法整備といえそうです。今までは結局、「法律がないから」という感じで、あとは運用者個人のイデオロギーに任されていたと思うのですよね。結局。福祉の方には手厳しいですが、児童虐待は「福祉職」ですが、2年で異動される左遷部署という評価が定着して、改革を起こそうとする機運がなかった。全く。それは、裁判官の家裁にもいえるところなんですね。そういうところからの立法的手当によるしかなかったので、画期的といえそうです。

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