離婚により日本に子どもを連れ帰った親が、家裁に、子の親権者・監護者の指定又は変更の審判の申立をする場合には、子の住所が日本にであれば日本の裁判所に管轄が認められることになります。 現在東京地裁で一部否定する動きがみられるものの、原則的には、子どもの住所地が日本にある場合は日本の裁判所に子どもの監護に関する国際裁判管轄が認められてきたものと解されていますが、2014年4月1日発効のハーグ条約との関係での問題意識を持ち、国際裁判管轄を否定した事例が出てきています(東京高裁平成20年9月16日)。 たしかに、外国判決により夫を親権者としたのに対して、連れ帰った後、日本の裁判所が妻を親権者に変更することについては、外国裁判所の決定を不当に無視するとの批判が寄せられています。 しかしながら、外国裁判所は、子どもが日本に連れ帰られた後においても、残された親からの申立を受けて、子の監護に関する決定を行い、残された親に単独監護権を与えることがあります。このような場合、日本人親の言い分が聞かれておらず、かつ、調査もなされておらず、このような一方的な裁判については我が国における民事訴訟法118条の外国判決の承認要件を欠くと主張する可能性もあります。 一例として、子どもの日本への連れ帰りが、外国裁判所の監護決定に反している場合は、民事訴訟法118条の外国判決の承認要件のうち、1号ないし2号を満たし、海外における裁判を受ける権利が保障されていたとみることができるからと想われます。 もっとも、いわゆるチェイシング・オーダーと呼ばれる、親の一方が他方の親の同意、裁判所の許可をなしに国外に連れ去ったことを理由として子の監護状況について調査を行わず引き渡しを命じる例もあります。このような外国判決は、民事訴訟法118条の定める要件、確定性、公序要件を満たさないとされる可能性はあります。