当事務所で暴力を原因に婚姻費用が信義則に反するとの判断が示されました。

名古屋家裁は、「別居の原因が専ら又は主として婚姻費用の分担を求める者にあることが明らかであるなど特段の事情がある場合においては,その請求は信義則に反するものというべきである」との規範を定立している。このような規範定立は珍しいといえます。 大阪高決平成28年3月17日判タ1433号126頁が,「夫婦は,互いに生活保持義務としての婚姻費用分担義務を負う。この義務は,夫婦が別居しあるいは婚姻関係が破綻している場合にも影響を受けるものではないが,別居ないし破綻について専ら又は主として責任がある配偶者の婚姻費用分担請求は,信義則あるいは権利濫用の見地からして」,有責配偶者からの請求は認められないと判示したものである。また,大阪高決平成25年9月20日平成25年(ラ)第799号は,夫婦は,別居中であっても,別居の原因が専ら又は主として婚姻費用の分担を求める者にあるなど,婚姻費用の分担を求めることが信義則に反するといえるような特段の事情がない限り,他方には婚姻費用分担義務がある,として特段の事情が認められる場合,婚姻費用分担義務は否定されるとしている。 (2) 夫婦は,婚姻中いわゆる生活保持義務としての婚姻費用分担義務を負うが,別居に至った原因が,専ら又は主として権利者のみに存する場合には,権利者の分の婚姻費用分担請求は信義則に反しあるいは権利濫用として許されないと解する裁判例である。(東京高決昭和58年12月16日判タ523号215頁,福岡高宮崎支決平成17年3月15日家月58巻3号98頁,東京家審平成20年7月31家月61巻2号257頁) 2 権利者の有責性は実体判断  婚姻費用の分担額に影響するため,婚姻費用分担請求事件においては,しばしば義務者側から権利者の有責性を主張して婚姻費用の支払を拒むケースがみられる。有責性の内容としては,不貞が最も多い。本件は暴力についても有責性を基礎づける事情としての判断を示した初判断を示したと思われるケースと解されるところで、実務上の参考になると思われます。

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