子の利益のために必要があるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求により親権者を他の一方に変更することができます(民法819条6項)。 さて、親権者の変更は、必ず家裁の審判などによる必要があるものとされています。 では、子の福祉、つまり子の利益のために変更する必要があるかは明文がありませんから、裁判所の合理的裁量に委ねられています。 したがって、その裁量の逸脱・濫用がない限りは違法の問題は生じないともいえますが、現実には準則化が図られています。 そして、親権者の変更はかなり厳しく、指定後の事情の変更のうち、著しい事情の変更が認められなければならないと解するのが相当である、とされています(東京高裁昭和31年9月21日)。たしかに親権者をころころ変更することができると、子の立場が不安定になる時代もあったと解されますが、今日ではある程度緩やかに解することが妥当であると考えます。 親権者変更については、子どもの意思、現状の尊重、などが重要な要素になっているところ、子が親権決定時より非親権者のもとで養育されている(東京高裁昭和60年5月27日)。また、親権者決定後に、子どもが非監護者のもとに移動し、子どもの意思が明確であることなどが考えられています。 この点、海外では外国人夫の親権があるとされたものの、日本人の親が帰国後、その変更を日本の裁判所に求めるケースがあります。 変更ではなく指定として申し立てられることがあります。特に、外国裁判所において監護権の裁判の手続き中や決定後に、外国裁判所の命令に違反して子どもが日本に連れ帰られたという経緯がある場合、このような事情がどの程度監護者指定の判断において考慮されるかが問題となります。一般的には、子の生活の安定が考慮され日本に連れ帰った親を子の監護者と指定する傾向があります。 2014年4月1日からハーグ条約の効果が生じていることから、2014年4月1日以降に、帰国したような事例において、同様の解決がなされ得るものであるのか、今後の運用の検証が待たれるところです。