時事通信の報道によると、離婚の調停・裁判などで広く利用されている婚姻費用(生活費)・養育費の算定表について、最高裁の司法研修所(司法研究)が見直しを進めている。このこと自体は以前から公表されていたので、どのような内容になるのか注目される。
時事通信によると、「近年、シングルマザーの困窮が顕在化し、日弁連も「現行表は低額すぎる」と改訂を提言しており、社会情勢の変化を反映させる必要があると判断した。来年5月ごろに報告書をまとめるという。」とのことで、来年5月に新算定表の司法研究が出されるということになりそうです。
ただ、裁判員であっても、司法研究が出たらそのとおりになるかというとそうならなかった時期もあり、すぐに定着するかは疑問も残ります。
現行の算定表は、有志の裁判官らが「簡易迅速」な裁判を目指し、2003年4月、判例タイムズに公表した。離婚訴訟などの管轄が04年4月に地裁から家裁に移管されるのを前に、家計調査などに基づいて取りまとめたもので、今も各地の家裁で参考にされている。
この算定表は、子どもの年齢や人数、支払う側と受け取る側の年収ごとに月額の養育費を提示。例えば、支払う側の父親の年収が400万円で、15歳の子ども1人と同居する母親が200万円のケースは「月4万~6万円」としている。
だが、シングルマザー世帯の平均年収は、子どもがいる全世帯の3~4割にとどまるなど、困窮する一人親世帯の問題が顕在化。日弁連は16年11月、「現行表は著しく低く、支払う側の生活水準に見合った額ではない」などと、月額を現行の1.5倍程度とする「新算定表」を独自に策定した。
ただし、日弁連がまとめた新算定表は裁判で採用されるに至らず、結果、加算調整をより柔軟に認めていくべきという方向性で、裁判官による日弁連の新算定表に反対する論考もいくつか公表された。
司法研修所による見直しでは、生活保護費算出の基礎となる最低生活費や、税制、教育費などの変化が反映される見通しだが、時事通信では「あるベテラン裁判官は日弁連の新算定表については「引き上げありき。払える額でない」と疑問を呈する。」という。このことからみると見直し幅は少額にとどまりそうで、現在大きく統計が変わっているところを直すという方向性になるのではないかと思われる。
結局、ある程度は、児童扶養手当の充実など福祉的解決のアプローチをとった方が良いように思う。というのも養育費が問題とされるのはまだ年収が低い20代の父母のケースも少なくなくない。それでこどもの貧困といっても両親に余裕がない場合はそれは労働政策の問題もある。算定表だけの問題ではあるまい。また、児童扶養手当に所得の上限等規制があるため、積極的に働こうとしない監護親がいる実態も少なからず散見される。むしろ積極的な就労を促すような仕組みも厚生労働省は検討しても良いようにも思う。
特に、首都圏では共働き世帯が多いので、パート労働を他方が続けている場合の不公平感などもどのように是正されるかも課題だ。ただ、司法研究での算定表は従来の標準算定方式のうち数値をアップツーデートにしたもの程度にとどまるのではないか、と思われる。どのような算定表が出されるか注目される。